「うちには関係ない」が一番危ない——就業規則を見直すタイミング

「うちには関係ない」が一番危ない——就業規則を見直すタイミング
こんな人にオススメの記事
  • 就業規則の整備が後回しになっている方
  • スタッフとの間で労働条件のトラブルを防ぎたい方
  • 「10人の壁」を意識したことがなかった方
  • 就業規則は「縛り」だと感じている方

「まだ大丈夫」が、取り返しのつかない事態を招く

「就業規則? うちは家族経営に毛が生えたようなものだから、まだいいよ」

スタッフが数名の牧場で、こうした声を聞くことは少なくありません。現場には搾乳も飼料管理も動物の体調管理もある。スタッフとの関係もうまくいっている。わざわざ堅苦しいルールを作る必要があるのか——そう感じるのは自然なことです。

しかし、就業規則の問題は「トラブルが起きてから」では遅いのです。有給休暇の取り扱いで揉めた時、労働時間の認識が食い違った時——「ルールが決まっていない」状態は双方にとって不幸な結果を生みます。

就業規則はトラブルを起こすためのものではありません。経営者とスタッフ双方を守る「お互いの約束事」なのです。

KEY POINT

「人数が少ないから義務がない」「関係は良好だから大丈夫」——就業規則が後回しにされがちですが、人数が少ないからこそ、一つのトラブルが経営を大きく揺るがします。

見落としがちな「10人の壁」と法的リスク

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則の届出義務があります。「うちは10人未満だから関係ない」と思われるかもしれませんが、2つの落とし穴があります。

パート・アルバイトもカウントされる。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも「常時10人」に含まれます。「正社員は5人だから」と思っていても、パートを含めると10人を超えているケースは珍しくありません。

法的義務がなくても、ルール不在のリスクはある。10人未満の事業場に届出義務はありませんが、就業規則がない状態でトラブルになれば、判断基準なく対応を迫られます。口約束は証拠にならず、「そんな話は聞いていない」「言ったはずだ」というやり取りは信頼を深く傷つけます。

小規模な牧場こそ、スタッフ一人ひとりとの関係が経営の生命線です。その関係を守るためにこそ、ルールの明文化が必要なのです。

実際に起きているトラブルのパターン

就業規則の不備が引き起こすトラブルは、どれも「まさかうちで」と思うものばかりです。

有給休暇のトラブル。繁忙期に複数スタッフが同時に有給を申請した場合、取得ルールが決まっていなければ混乱します。有給は労働者の権利ですが、事業運営との調整にもルールが必要です。

労働時間と残業のトラブル。分娩が重なれば深夜まで作業が続くこともある牧場の仕事。こうした変動の扱い方、残業代の計算方法が定まっていなければ、後から「残業代が払われていない」という主張につながります。

退職時のトラブル。突然の退職申し出に対して、引き継ぎ期間や退職届の提出期限が定まっていないと、スムーズな引き継ぎができず、残ったスタッフにも不安が広がります。

KEY POINT

就業規則で最低限定めるべきは「労働時間・休日・休暇」「賃金」「退職・解雇」の3領域です。まずこの3つを明文化するだけでも、大きなリスク軽減になります。

就業規則は「縛り」ではなく「安心の土台」

「自由を奪われる」「堅苦しくなる」と身構える方もいるかもしれません。しかし、ルールがない状態とは「すべてが暗黙の了解」で回っている状態です。新しいスタッフが入った時、世代が変わった時、信頼関係にヒビが入った時——暗黙の了解はあっという間に崩れます。

就業規則はそうした時に立ち返る「基準」です。感情的な対立を避けて冷静に話し合える土台になります。

むしろ、就業規則の整備はスタッフに「あなたの権利をちゃんと守ります」というメッセージです。労働時間も休暇も給与計算も明確になっている——この安心感がスタッフの信頼を深め、定着率向上にもつながるのです。

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見直しのタイミングを逃さない

就業規則は「一度作ったら終わり」ではありません。以下のタイミングでは見直しを検討しましょう。

スタッフ数が変わった時。10人超えで届出義務が生じますが、5人から8人に増えた段階でも、認識のズレが生じやすくなるためルール見直しは有効です。

法律が改正された時。時間外労働の上限規制、有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金など、重要な改正が相次いでいます。

トラブルが起きた時。同じトラブルが繰り返されないよう、ルールの明確化・修正を。

まずは「今、うちの牧場ではどんなルールが暗黙の了解になっているか」を棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。現状を書き出すだけでも「ルールが曖昧な部分」が見えてきます。各地域の社会保険労務士会や農業経営支援機関に相談窓口がありますし、補助金を活用できるケースもあります。

「うちには関係ない」と思った今が、実は見直しの一番良いタイミングかもしれません。

この記事のまとめ
  1. 就業規則は経営者とスタッフ双方を守る「お互いの約束事」であり、トラブルが起きてからでは遅い
  2. 10人未満でも法的義務がないだけでリスクは同じかそれ以上に大きい
  3. 最低限「労働時間・休日・休暇」「賃金」「退職・解雇」の3領域を明文化する
  4. 就業規則の整備は「縛り」ではなく「安心の土台」——スタッフの信頼と定着率向上にもつながる
  5. 法改正やスタッフ数の変化など、定期的な見直しのタイミングを逃さないことが大切
  6. まずは現状の「暗黙のルール」を棚卸しすることから始めてみる
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