経営者とスタッフの「見えている景色」はなぜズレるのか

経営者とスタッフの「見えている景色」はなぜズレるのか

「いい経営」をしているのに、なぜかチームがまとまらない

牧場経営のコンサルテーションで、ある現象に何度も出会います。

経営者は「循環型農業を実践し、地域に貢献する牧場を目指している」と明確に語っているのに、現場のスタッフに聞くと「とにかく効率的に運営する牧場が目標」という答えが返ってくる。あるいは、経営者が「グローバル展開を視野に」と語っているのに、スタッフは「地域との関わりを大切にしたい」と考えている。

どちらも前向きな思いで仕事をしているのに、なぜか噛み合わない。方針決定の時に意見が割れる。新しいプロジェクトの際に足並みが揃わない——こうした課題の根底にあるのが「ビジョンのズレ」です。

興味深いのは、経営者自身はこのズレに気づいていないことが多いということです。「スタッフと一緒に同じビジョンを見ている」と思い込んでいるからです。

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「見えている景色」が異なる理由

なぜ、経営者とスタッフの見えている景色がズレるのでしょうか。

立場による情報量の違い

経営者は、経営計画、市場動向、経営理念の形成過程など、多くの情報を持っています。一方、現場スタッフが知るのは、日々の業務と直接の指示だけです。同じビジョンの話を聞いても、背景にある情報量が違うため、理解の深さが異なります。

経験と思考の違い

経営者は経営視点から物事を考えます。しかし、スタッフは現場視点から考えます。「循環型農業」という言葉を聞いても、経営者は「市場ポジショニング」や「ブランド価値」を想像し、現場スタッフは「作業の内容」や「自分たちの役割」を想像します。

言語化されていない価値観

経営者の頭の中には「こうでありたい」という想い がありますが、それが完全には言語化されていません。スタッフに伝わるのは、その一部に過ぎないのです。

つまり、ビジョンのズレは「経営者とスタッフの努力不足」ではなく、むしろ「ビジョンを共有するプロセスが整備されていない」ことが原因なのです。

KEY POINT

ビジョンが共有されていない兆候は、こんなところに表れます。

– 方針転換の時に、スタッフから戸惑いの声が上がる

– 新しい取り組みを説明しても「なぜそれをするのか」という質問が出る

– スタッフ同士で、牧場の進む方向について意見が異なっている

– 採用時に「この牧場はどんな場所か」を一貫した言葉で説明できない

一つ以上当てはまるなら、ビジョン共有が不十分かもしれません。

ズレを「見える化」する——ビジョンワークショップの効果

では、どうやってビジョンのズレを解消するのか。

重要なのは「経営者が一方的に語る」のではなく「組織全体で一緒に考える」プロセスです。これを可視化するツールとして有効なのが「ビジョンワークショップ」です。

具体的には、経営陣とスタッフが一堂に集まり、以下のような問いについて一緒に考え、話し合うのです。

「5年後、我々の牧場はどんな牧場でありたいか」

「その時、スタッフはどんな仕事をしているか」

「消費者に何を提供したいか」

「地域社会に何貢献したいか」

このプロセスで面白いことが起こります。経営者が考えていた「循環型農業」というビジョンが、実はスタッフの頭の中では「地元産の良い飼料を使う」ことだけを意味していたことが分かる。あるいは、スタッフが「世界的なブランドになりたい」と考えていた事実が明かになる。

ズレが見える化された瞬間、初めて「本当のビジョン共有」が始まるのです。

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「見える化」した後が本当の勝負

ビジョンのズレが見える化した後、経営者には大きな決断が迫られます。

スタッフの考えを聞いて「それも一理ある」と感じたなら、経営方針そのものを修正する勇気が必要です。あるいは「自分たちの方針に共感してくれないなら、そうした人は採用しない」という選別も起こるかもしれません。

重要なのは「ビジョンは経営者が決めるもの」という発想を少し柔軟にすることです。スタッフの視点を取り入れることで、より実現可能で、チーム全体で推進できるビジョンへと磨き上がるからです。

そして、何度も大切なのが「透明性」です。ビジョンが決まった後も「なぜそのビジョンに至ったのか」「決定過程でどんなズレがあったのか」を、スタッフと共有し続けることです。そうすることで、スタッフは経営者の決定を「一方的に押し付けられたもの」ではなく「みんなで作ったもの」と感じられるようになります。

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「牧場の色」が形成される瞬間

ビジョンのズレを解消し、スタッフ全員が同じ景色を見始めると、組織に変化が起こります。

意思決定が速くなります。新しい事業を検討する際に「これはビジョンに合致しているか」という問いが、自動的にチーム全体から上がるようになるからです。

採用がしやすくなります。「うちの牧場はこんな牧場です」と、一貫した言葉で候補者に伝えられるようになるからです。

何より、スタッフの主体性が高まります。経営者から「これをやれ」と指示されるのではなく「これはビジョンに合致しているから、みんなでやろう」という自発的な動きが増えるのです。

KEY POINT

ビジョン共有により、こんな変化が起こります。

– 意思決定の基準が明確になり、判断が速くなる

– 新規採用時に「うちの牧場らしさ」を明確に伝えられる

– スタッフの主体性が高まり、自発的な業務改善提案が増える

– 困難な局面でも「ビジョンのために」と団結できる

まとめ:ズレを見える化することから始まる

経営者とスタッフの「見えている景色」がズレているのは、珍しいことではありません。むしろ、多くの組織では何らかのズレが存在しています。

問題は、そのズレに気づかず、あるいは目を向けず、経営を続けることです。ズレに気づき、見える化し、スタッフと一緒に「本当のビジョン」を作り直すプロセスこそが、強い組織を作るのです。

ビジョンのズレ解消は「経営課題」ではなく「チーム形成の最初の一歩」です。その一歩を踏み出すことで、初めて「うちの牧場の色」が輪郭を持ち始めるのです。

この記事のまとめ
  1. 経営者とスタッフのビジョンのズレは、多くの組織に存在する
  2. ズレの原因は「努力不足」ではなく「共有プロセスの欠如」
  3. ビジョンワークショップで「見える化」することが最初の一歩
  4. ズレが見える化された後、経営方針の修正や磨き上げが起こる
  5. 透明性を持ったコミュニケーションにより、真のビジョン共有が実現する
  6. ビジョン共有により、意思決定の速度と組織の主体性が高まる
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